Applied Behavior Analysis(ABA)は、応用行動分析と訳され、アメリカの心理学者B.F. Skinner(1904-1990)によって創始されている行動分析学の一領域です。Skinnerは行動を生じる環境事象との関数的関係に関心を持ち、学習に必要なものは反応の後にどれだけ強化が伴うのかという強化随伴性であると指摘し、『生体の行動』(1938)の中でオペラントという用語を導入し、レスポンデント条件付けとオペラント条件付けを区別しました。環境に隠されている強化随伴性を変えれば、それに伴って行動は変化するという考え方から、オペラント条件付け研究は学習におけるティーチングマシン、さらには行動療法をもたらしました。ABA行動療法はその一つです。
まず、考えてみてください。
「水道の蛇口をひねるのはなぜ?」、普通は「水を飲むため」と答えますね。しかし、応用行動分析学に基づき解釈すると「水栓が回るから」或いは「水が出るから」となるのです。下記の図に示すようになります。
このあたりを理解する為に、まず行動には様々な小さな行動の連鎖がある事、強化によって行動ができる事、強化の条件として行動前後の変化が重要である事、「目的と行動」と「目的の完了」とは異なる事を理解する必要があります。
① 行動には連鎖がある
例えば、今私は皆の前に立っています。今から外へ出ようと思います。まずドアの方向に向きます。次にドアの方向に歩き、ドアの取っ手を握り、取っ手を引っ張って開け、歩き、外へ出ます。このときが外へ出るという目的の完了となります。このように、ドアを開けて外へ出るまでには多くの行動があり、それが連鎖していることが分かります。
② 強化によって行動ができる
生まれた赤ちゃんが初めてこの世界を見る時、右を見たいと思ってみていると思いますか。そうではありませんね。初めては右を向いたら右の景色が見えた、何回も右を向くと右の景色が見えるものですから、右を向くと右の景色が見える事を学ぶのです。この時は「右が見えるから向いている」のです。もし右を向いても何も変化がなければ、つまり何も見えなければ右に向く行動は起こらないのです。ですから、行動が起こる出発点は「右の景色が見えるから右を見る」であることが分かります。この例から「水道の蛇口をひねるのはなぜ?」の問いの答えが「水栓が回るから」或いは「水が出るから」という事が分かります。
③ 強化の条件:行動の前後の変化
行動の直前(A)と行動の直後(C)に変化がなければ行動は起こらないのです。「蛇口の水栓をひねる」後、水が出なければ、蛇口の水栓をひねる行動が消えてしまいます。これが「消去」と呼ばれます。逆に「蛇口の水栓をひねる」後、水が出た、それが何度も繰り返され「水が出る」とき、「強化」が起こるという事になります。
④ 目的と行動、目的の完了の違い
どうして私たちは、水道の栓をひねることを、「水を飲むため」と考えるのでしょうか。それは、目的と目的完了の間に様々な行動がある事を忘れてしまっているからです。また、これらの多くの行動を意識しながら行動しますと時間がかかってしまいます。ですから、自動化されて気づかないようになっているわけです。例えば、自転車を初めて練習した時を思い出してください。最初は一つ一つ確かめながら動作の練習をしていたと思います。何回も練習することで、ぎごちない動きからスムーズな一連の動きが出来上がっていったことと思います。そうしているうちに、これらの動きは自動化されて意識しないでも自由に運転できるようになっていったのです。一つ一つの行動には意味があり、それぞれ強化という原理で行動が出来上がっていたのですが、連鎖が出来上がり自動化されてしまった為、自転車のペダルを踏むのはなぜかと問われた時、自動化された部分は意識されず、行動の結果である「前に進むため」とか「買い物をする為」を思い浮かべ答えてしまうのです。(有門,2022)
以上はABAの基礎知識です。
では、次回お楽しみ下さい。
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